ロボットコラム

鉄道開業150周年

 執筆者:伊藤吉泰(イトウヨシヤス)

カテゴリ : 安全

今回は、「鉄道開業150周年」についてのコラムです。

今年は西暦2022年ですが、明治5年(1872年)10月14日に日本で鉄道が開業されてから150年にあたります。鉄道開業時の出発点は東京新橋停車場で、横浜まで29キロメートルを53分で結んでいました。(開業前の新橋から横浜は、徒歩でほぼ1日:10時間ほどかかり、これが1時間弱で移動できる画期的なものでした)

蒸気機関からスタートした日本の鉄道事業ですが、今では電気動力が主力であり、その代表ともいえるのが新幹線です。その新幹線を支える世界トップレベルの安全安心技術の一つを紹介したいと思います。

それは新幹線に電気を送るための架線とパンタグラフの技術です。架線とパンタグラフは常に接触しており、新幹線の場合は時速300km以上にもなるため、常に摩擦による架線の擦り切れ・断線のリスクがあるのです。

架線の擦りや切れを点検するため、パンタグラフと触れる部分:架線トロリ線の点検が必要となります。このトロリ線の点検を行っているのが、皆さんおなじみの「ドクターイエロー」です。

ドクターイエローは点検走行中に、パンタグラフ付近からレーザーを照射し、トロリ線の摩耗を調べているのです。摩耗が発見された場合は、作業員が別のタイミングで摩耗個所をさらに詳しく調査(計測)し修理交換しています。

架線断線のリスクは摩耗だけではありません、雨天時走行中にトロリ線に発生するアーク放電があります。これは雨粒や雪が障害となり、トロリ線にアーク放電が生じて発熱し、摩耗発生につながる場合があるのです。

こうした局所的な摩耗はレーザー計測(点での点検)だけでは把握が困難で、より連続的な線による点検が必要となります。そのためトロリ線自体に検知線(電線)を埋め込み、この検知線が先に摩耗することでトロリ線摩耗を発見しようという取り組みも行われています。

さらに検知線を光ファイバ(光の信号)にすることで、停電(検知線断線)時でも摩耗個所特定を可能する技術も開発されています。

架線とパンタグラフは一見地味な技術かもしれませんが、「架線断線事故を「0」にしたい」「お客様の安全安心を確保したい」という、鉄道関係者の熱い想いを感じます。

今回一部の紹介でしたが、新幹線開業以来死亡事故「0」という世界に誇れる安全運航は、メンテナンスでのこのような細かな技術や改良の積み重ねに支えられていると思います。

 

(本コラムは、JR東日本・北陸電力・住友電工・日立などのホームページから写真を抜粋・掲載しています。)

(鉄道150周年関連情報は下記のJR東日本150周年関連ホームページよりご確認できます。)

https://www.jreast.co.jp/150th/

執筆者プロフィール

伊藤吉泰(イトウヨシヤス)
伊藤吉泰(イトウヨシヤス)本田技研工業OB (北米・中国 現地法人・生産拠点駐在含む)
2021年度より浜松ロボット産業創成研究会のコーディネータに就任。

本田技研工業では海外拠点での生産ラインの企画や立ち上げ業務、国内生産ラインのライン長などを歴任。得意領域は機械安全やロボット安全など労働安全分野、工場動力などでの省エネ/環境対応など。