ロボットコラム

医療用手術支援ロボット「hinotori」のご紹介

 執筆者:伊藤吉泰(イトウヨシヤス)

カテゴリ : ロボット情報

今回は、医療用手術支援ロボットhinotoriについてのコラムです。

手術支援ロボットでは米国製のダヴィンチが有名ですが、川崎重工の産業用ロボットの技術をベースにドクターのニーズなど加味して開発されているのが国産手術支援ロボットのhinotoriです。

©Tezuka Productions

最近時の外科手術ですが開腹手術ではなく、より患者負担の少ない腹腔鏡手術がふえており、この手術では手術支援ロボットがより現実的な支援ツールとして普及が進んでいます。

hinotoriは実際に患者さんへの手術を行うオペレーションユニットと、執刀医が操作するサージョンコックピットに分かれています。

オペレーションユニットの特徴は実際の手術を行う4本のアームとサポートフレームで構成されています。

人間の腕は7個の関節ですが、hinotoriのアームは8個の関節を持ちより繊細な動きに対応可能となっています。また手先部分は、240度の高角度まで動作可能で、稼働可能範囲が確保されています。

また、手振れなど従来困難であった内視鏡カメラの固定も比較的容易に行えるメリットがあります。小さな手術室でも導入可能なようによりコンパクトに設計されており、アーム周りがすっきりしており清潔野にいる術者のスペースが確保されているのも大きな特徴です。

コックピットは指や腕の動作に加え、足元のフットペダルを使って、カメラや補助鉗子への切り替えが可能となっております。

術者は3Dビューワにより、立体的な高精度映像をもとに操作可能です。コックピットは術者の様々な姿勢に対応可能なエルゴノミクスデザイン(人に優しい)で、より使いやすさを追及しているのも特徴となっています。

日本の病院数は8000以上あるといわれ、先進国の中でも病院数は多いようです。

しかしながら症例が分散しているデメリットもあり、遠隔地からの手術執刀や若手の医師への手術支援・トレーニングのニーズが高いといえます。

手術支援ロボットの普及で、医師の少ない地域でも遠隔地からの施術により、高度な医療を実現する可能性がより高まることが期待されます。

遠隔地からの施術では通信回線を活用しますが、通信速度の安定化などインフラ面の整備・充実が求められています。まだ解決すべき課題も残されていますが、より一層の安全性確保に向け現在様々な実証実験が行われています。

「誰も取り残さない社会の実現」SDGSの目標達成のため、地域医療のより一層の充実が求められます。今後もより一層の普及が待たれるロボット技術となっています。

(写真提供:株式会社メディカロイド様)

 

 

執筆者プロフィール

伊藤吉泰(イトウヨシヤス)
伊藤吉泰(イトウヨシヤス)本田技研工業OB (北米・中国 現地法人・生産拠点駐在含む)
2021年度より浜松ロボット産業創成研究会のコーディネータに就任。

本田技研工業では海外拠点での生産ラインの企画や立ち上げ業務、国内生産ラインのライン長などを歴任。得意領域は機械安全やロボット安全など労働安全分野、工場動力などでの省エネ/環境対応など。