ロボットコラム
カテゴリ : 基礎知識
今回のコラムは、ホンダのものづくりの考え方についてです。 (こちらは自分が在籍当時に感じていたことで、会社として公式のものではありません)
自分が現場に配属された時に最初に言われたのは、次のような技術担当としての仕事の基本です。「図面あるいは試作品を見て、どうやって作るのかを決めるのが仕事」
① 生産設備、レイアウト、要員配置など生産プロセスを考える ② より安く、より品質を良くする工法はないか検討する ③ 図面形状変更などで、より作り易くならないか考える
などです。
なかでも②「より安く、より品質を良くする工法」ですが、基本は省プロセスです。 自分の担当は鉄系軸物(ギア・シャフトなど)エンジン・シャーシ部品でした。
写真は鉄系軸物の部品例です。(機械加工前のもので、あくまでも参考例です)
基本のプロセス(工程編成)は、以下のようです。
素材→プレス(塑性加工)→機械加工→熱処理→研磨加工(仕上げ)
この中で初工程のプレスにホンダとして意思入れがありました。精密冷間鍛造技術です。 (鍛造とは鉄を鍛える工程で、日本刀の刃をたたいて鍛えることをイメージして下さい。)
この技術のメリットは次の3点です。
1) 素材を直接プレス成型することによる切粉など加工ロスの削減 2) 表面の仕上げ精度向上による加工工程(設備数)の削減(最終形状までの保証) 3) 材料表面の加工硬化による材料表面の強度アップ
上記の4工程が究極の形として、素材から2工程まで短縮することも可能となるのです。
素材→プレス→(機械加工)→熱処理→(研磨加工)
写真は代表的な鍛造プレス設備です。
中間工程である機械加工や研磨加工の省プロセス(部分的ですが)が可能となるのです。 そのため、必要となる機械加工設備数が、例えば3台から1台、研磨設備が3台から2台など台数削減が可能となります。
鍛造設備や金型など初期投資が大きいなどデメリットもありますが、大量生産によるコストダウンメリットもあるため、ホンダとしても技術開発に力を入れていました。
このプレス:精密冷間鍛造への技術的な意思入れが他社との違いを生み、ものづくりでの競争力となっていったのです。 この実践事例については、モノづくり②として、別の機会にまた紹介します。
(写真提供: ミヤマ精工株式会社 様)