ロボットコラム

空のカーボンニュートラル

 執筆者:伊藤吉泰(イトウヨシヤス)

カテゴリ : 新技術

いつもコラムのご愛読、ありがとうございます。

今回は、空(航空業界で)のカーボンニュートラルに関するコラムです。

~1 空のカーボンニュートラル

観測史上最も暑かったといわれる2023年夏は、日本だけでなく世界中で、近年にないような暑い夏になっています。地球の温暖化(沸騰化ともいわれますが)への対策が、ますます必要不可欠な喫緊の課題になっていると筆者は考えます。

地上輸送のカーボンニュートラルの取り組みもさることながら、今後増加が予想される航空需要、航空機における取り組みが必要になっています。航空業界におけるカーボンニュートラルの取り組みとして、① 電気自動車やハイブリット車など自動車分野で開発が進んでいる電動化の方法や、② 従来のジェット燃料を脱化石燃料であるバイオ燃料や、水素燃料を使用することで二酸化炭素の排出を削減する方法などが検討されています。

~2 ① 航空機電動化の実現性と課題

中型から大型航空機の電動化には、自動車などに用いられるリチウムイオン電池では、電気容量が不十分で、そのままでは使えないといわれています。ジェットエンジンやターボファンエンジンで発電し、バッテリーへ蓄電してからモーターへ電力を供給するハイブリッド方式が検討されています。しかしながら、バッテリーの高密度など、実現へのハードルは高いようです。

 

 

~3 ② バイオ燃料よる二酸化炭素削減

ガソリンスタンドなどで購入する燃料は、石油が原料となっており、燃焼時に排出される二酸化炭素は、もともと地中にあった炭素が基になっていて、大気中の二酸化炭素は一方的に増えてしまいます。

一方、バイオ燃料は、植物や動物など、地上にある生物資源(バイオマス原料)から製造されます。生物資源は、成長過程や生態系の中で光合成により、大気中の二酸化炭素をあらかじめ吸収しています。そのため、バイオ燃料を燃やした時に排出される二酸化炭素は、あらかじめ大気中にあったものを、元に戻しているだけといえます。

バイオ燃料とは、大気中の二酸化炭素量を今以上増やさないというコンセプトで開発が進むサステナブルな燃料なのです。

 

~4 バイオ燃料の種類

バイオ燃料の原料となる生物資源には、様々な種類があり、初期にはサトウキビやとうもろこしなどの食用植物が原料でした。ただ、食料との競合や、無理な栽培による森林破壊などの問題がありました。いま主流になっているのが、使用済みの食用油などの廃棄物系原料です。捨てられてしまうはずのものを再利用することで、年々その需要は世界中で上がり続けています。

~5 実用化が進むバイオ燃料

写真は、バイオ燃料5%を含むジェット燃料で、飛行するホンダジェットの写真です。今後、運航会社ではバイオ燃料での飛行機会を徐々にふやし、バイオ燃料の普及を進めてゆく、としています。

バイオ燃料の大きなメリットは、既存の航空機エンジンを大きく変更することなく、適用できる点にあります。製造コストなどで、まだ課題もありますが、空のカーボンニュートラルの取り組みは、今後さらに強力に進められゆく必要があります。

 

JAXA(宇宙航空研究開発機構)、株式会社ユーグレナのホームページより写真、情報は参考・掲載しています。

 

執筆者プロフィール

伊藤吉泰(イトウヨシヤス)
伊藤吉泰(イトウヨシヤス)本田技研工業OB (北米・中国 現地法人・生産拠点駐在含む)
2021年度より浜松ロボット産業創成研究会のコーディネータに就任。

本田技研工業では海外拠点での生産ラインの企画や立ち上げ業務、国内生産ラインのライン長などを歴任。得意領域は機械安全やロボット安全など労働安全分野、工場動力などでの省エネ/環境対応など。