ロボットコラム
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今回のコラムは、明治時代の自動制御技術の紹介です。 群馬県にある富岡製糸場は皆さんご存じですか?
赤レンガ造りの歴史を感じさせる建造物があり、内部構造も天井をトラス式でささえ、空間を広く活用できるように工夫されています。なかは、操糸機が手前から奥までずらりと並んでおり壮観です。
こちらの目玉展示物の一つにブリュナエンジン(蒸気機関)があり、復元され動態展示(稼働する状態)されています。蒸気機関とは蒸気をシリンダへ送り込み、往復運動を回転運動に変換する機関です。このブリュナエンジンは、繭から生糸を作る操糸機の動力源として使用されていました。
この回転運動を制御する仕組み(調速機:ガバナー)がすごいのです。 もともとはヨーロッパの技術ですが、写真右上部分にある2個の球体部分が回転制御を行います。回転が速くなると、遠心力で2個の球体部分(分銅)が回転しながらだんだん上に上がってきます。するとリンク機構により下方部の蒸気弁が絞られ、シリンダへ送られる蒸気が少なくなり、回転を遅くすることができます。
逆に、回転が遅くなると2個の球体部分(分銅)が自重で下がり、リンクされた弁が上方へ解放されシリンダへ送られる蒸気量が増します。するとシリンダ往復運動が速まり、回転速度を速くすることができます。遠心力を利用したシンプルな仕組みですが、負荷の変動に対して回転速度を一定に保つ調速が可能となっているのです。
この蒸気機関は、富岡商工会議所の工業部会員38社で組織された「ブリュナエンジン製作委員会」が、3~4年ほどかけて復元製作し完成させたものです。 設計図もなかったため、移管された愛知県の明治村まで、展示品の外観などの計測に通ったそうです。明治村に移管させたエンジンも、モーター稼働ですが保存展示されており見学可能です。
実物を前にすると、製作委員会の皆さんの心意気(下町ロケットのような)を感じることができます。
富岡製糸場、明治村など日本の近代化遺産を見学することで、先人たちのものづくりの知恵や努力をうかがい知ることができ、おすすめのスポットです。
http://www.tomioka-silk.jp/tomioka-silk-mill/
(ブリュナエンジンの展示状態(動態展示されているか?)・展示時間については、ホームページなどで事前確認されると、より効率よく見学可能です。)
(写真協力:富岡商工会議所様)