導入モデル紹介
データ化が難しい手作業
不規則でなめらかな熟練工の手つきをロボットへ正確に教示することは困難だった。仕上がりや膜厚を決めるのは、塗料の質と塗料の塗布量。ロボットには、スプレーガンの押圧力や押圧時間、塗りのスピードまで教示しなければならない。 複雑な動きを避けるあまりロボットの動きを大雑把にしすぎると、今度は導線や塗料のムダが多くなり非効率となってしまう。作業者の手つきを“そのまま”再現する方法が求められていた。
ロボットと手作業の最適解を見つける
スプレーガンに取り付けたモーションセンサー同士が重なり、片一方のセンサーの死角となる地点が発生するため、必要な座標データがうまく揃わない課題と直面した。死角を生まないようモーションセンサーを4台から6台に増設。ロボットが苦手とする一部の動作・軌跡は、熟練工側の動きを工夫しカバーした。ふじのくにロボット技術アドバイザーにも定期的に状況を相談、アドバイスを受けた。
稼ぎ頭の職人ロボットが完成
同社で一番の稼ぎ頭と同じ作業をロボットも可能としている。生産性は1.5倍に。品質が一定レベルに安定し、不良品率が大幅減。検品作業も楽になった。ロボットは疲労しないため、生産数や作業時間が見積もれる。そのため、生産管理が容易になり、新規の受注もしやすくなった。
労働環境の改善
手にスプレーガンを持ちながら行っていた塗装作業をロボットが代替するので、作業者の体に負担のかかる作業工程を減らせた。より繊細な作業を要する製品・作業に熟練工を配置できるようになった。結果的に熟練工のモチベーションアップに繋がり、女性や高齢者の採用・活躍にも寄与している。
DXによる新たな事業への挑戦
DXを達成した同社では、まさに新たな事業がスタートしそうな勢いだ。スプレイトレーサを使えば、さまざまな製品・工程のロボットプログラミングを自社で制作できる点に着目。本社と同様の生産体制を持つ別拠点の開設や、ロボットプログラミングの外販を検討していく。直近ではもう1台、塗装ロボットの導入を検討中である。
自社に最適な仕組みがあれば塗装工程の自動化を進めたいと考えていたところ、エイシンフォニーと取引のある商社の担当者が鈴木氏へスプレイトレーサの存在を紹介。
旭サナック社と商談を行い、製品仕様や導入方針を確認。2019年11月、スプレイトレーサ導入企業となる。
熟練工の動作をモーションキャプチャに読み取らせ、プログラミングデータに変換しロボットにティーチングを行う。モーションキャプチャが読み取りきれない職人の手さばきを、何度もモーションキャプチャで撮り直して調整。
プログラミングデータをパソコンからロボットシステムに転送し、熟練工の動きが再現されているかロボットの動作を確認。不備や不具合があれば、再度モーションキャプチャの記録からやり直す。ティーチングペンダントは不要、作業者自身がプログラミングを直す必要はない。
熟練工の動きをより微細に記録できるよう、モーションキャプチャを2台追加。そのほか、細かな機能修正をSIerへ依頼。
2022年10月、熟練工の動作を忠実に再現した塗装ロボットが稼働をスタート。n
株式会社エイシンフォニー
2009年にアミューズメント製品の手吹き塗装を行う会社として個人創業。2017年に法人化、現在は自動車に用いる樹脂及び金属製品を多く手掛ける。小ロット品や複雑形状品にも対応。高精度マスク治具を使用した高品質な仕上がりに定評がある。従業員11人。
所在地/磐田市宮之一色86-2
https://a-sym.jp/
導入企業 担当者インタビュー
旭サナック株式会社
愛知県尾張旭市旭前町5050
https://www.sunac.co.jp/