導入モデル紹介

事例2 熟練工のスプレー作業をそのまま再現、スプレイトレーサ

ロボット導入企業
株式会社エイシンフォニー
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ロボットSler
旭サナック株式会社
薄物や意匠、複雑形状の部品など、高品質な表面塗装を実現するために、手吹きでなければ仕上げられない部品は多い。均一な厚みや美しい表面処理はまるでアート作品さながら。それを可能とする職人の手つきをロボットで代用するのは極めて難しいとされてきたが、とある新進気鋭の塗装メーカーがついに自動化を達成した。

事例概要

エイシンフォニーは、自動車の内装に用いられる樹脂部品や外装用の金属部品などの塗装加工を手がける。常時50~60品目に対応し、業界の厳しい品質要求にも確かな職人技で応えてきた。台座にセッティングしたワークに向かい、なめらかな手つきで塗料を塗布していく。驚くのは、熟練工さながらにその作業をしているのがロボットであることだ。

不規則に動く手の動きをデータ化し、ロボットに教示することは至難の技だ。職人の手の動作、スプレーガンの押圧、塗料の塗布時間などを緻密なデータとして記録しなければならないからだ。そんな中、モーションキャプチャの技術を応用することで熟練工の手つきを三次元位置計測し、ロボットプログラミングを自動生成する画期的なロボットティーチング支援システム「スプレイトレーサ」が、旭サナック社より発売される。

2019年11月、エイシンフォニーは世界で初めてスプレイトレーサを導入。導入当初は正確なデータを収集するのに苦労したというが、現在は同社でもっとも生産性の高い熟練工とほぼ同じ作業ができている。生産性は1.5倍にまで向上し、品質も安定した。今後は蓄積したティーチングデータの外販も検討したいという。
導入背景・課題

データ化が難しい手作業

不規則でなめらかな熟練工の手つきをロボットへ正確に教示することは困難だった。仕上がりや膜厚を決めるのは、塗料の質と塗料の塗布量。ロボットには、スプレーガンの押圧力や押圧時間、塗りのスピードまで教示しなければならない。
複雑な動きを避けるあまりロボットの動きを大雑把にしすぎると、今度は導線や塗料のムダが多くなり非効率となってしまう。作業者の手つきを“そのまま”再現する方法が求められていた。

導入の取り組み

ロボットと手作業の最適解を見つける

スプレーガンに取り付けたモーションセンサー同士が重なり、片一方のセンサーの死角となる地点が発生するため、必要な座標データがうまく揃わない課題と直面した。死角を生まないようモーションセンサーを4台から6台に増設。ロボットが苦手とする一部の動作・軌跡は、熟練工側の動きを工夫しカバーした。ふじのくにロボット技術アドバイザーにも定期的に状況を相談、アドバイスを受けた。

導入効果

稼ぎ頭の職人ロボットが完成

同社で一番の稼ぎ頭と同じ作業をロボットも可能としている。生産性は1.5倍に。品質が一定レベルに安定し、不良品率が大幅減。検品作業も楽になった。ロボットは疲労しないため、生産数や作業時間が見積もれる。そのため、生産管理が容易になり、新規の受注もしやすくなった。

労働環境の改善

手にスプレーガンを持ちながら行っていた塗装作業をロボットが代替するので、作業者の体に負担のかかる作業工程を減らせた。より繊細な作業を要する製品・作業に熟練工を配置できるようになった。結果的に熟練工のモチベーションアップに繋がり、女性や高齢者の採用・活躍にも寄与している。

DXによる新たな事業への挑戦

DXを達成した同社では、まさに新たな事業がスタートしそうな勢いだ。スプレイトレーサを使えば、さまざまな製品・工程のロボットプログラミングを自社で制作できる点に着目。本社と同様の生産体制を持つ別拠点の開設や、ロボットプログラミングの外販を検討していく。直近ではもう1台、塗装ロボットの導入を検討中である。

ロボット導入の流れ

STEP1 相談

自社に最適な仕組みがあれば塗装工程の自動化を進めたいと考えていたところ、エイシンフォニーと取引のある商社の担当者が鈴木氏へスプレイトレーサの存在を紹介。

STEP2 商談・導入決定

旭サナック社と商談を行い、製品仕様や導入方針を確認。2019年11月、スプレイトレーサ導入企業となる。

STEP3 ロボット教示と調整の繰り返し

熟練工の動作をモーションキャプチャに読み取らせ、プログラミングデータに変換しロボットにティーチングを行う。モーションキャプチャが読み取りきれない職人の手さばきを、何度もモーションキャプチャで撮り直して調整。

STEP4 プログラミング修正

プログラミングデータをパソコンからロボットシステムに転送し、熟練工の動きが再現されているかロボットの動作を確認。不備や不具合があれば、再度モーションキャプチャの記録からやり直す。ティーチングペンダントは不要、作業者自身がプログラミングを直す必要はない。

STEP5 SIerへのフィードバック、システム改良

熟練工の動きをより微細に記録できるよう、モーションキャプチャを2台追加。そのほか、細かな機能修正をSIerへ依頼。

STEP6 ロボットの本格稼働が開始

2022年10月、熟練工の動作を忠実に再現した塗装ロボットが稼働をスタート。

企業紹介

ロボット導入企業
株式会社エイシンフォニー

株式会社エイシンフォニー
2009年にアミューズメント製品の手吹き塗装を行う会社として個人創業。2017年に法人化、現在は自動車に用いる樹脂及び金属製品を多く手掛ける。小ロット品や複雑形状品にも対応。高精度マスク治具を使用した高品質な仕上がりに定評がある。従業員11人。
所在地/磐田市宮之一色86-2
https://a-sym.jp/

導入企業 担当者インタビュー

1人、2人と稼ぎ頭の熟練工が増えるイメージ、ロボット導入で売上げの純増を
職人の高齢化が顕著になってきたため、一部作業の自動化を進めたいと考えていました。スプレイトレーサは、熟練工の手つきをそのまま再現できるシステムと聞いて導入を即決。もっとも生産性の高い熟練工の技術を教示すれば、稼ぎ頭を1人増員するのと同じ効果が期待できると考えました。豊富なティーチングデータが蓄積できたので、今後はその外販などを通じ各社の自動化支援を行っていきたいと思います。

株式会社エイシンフォニー
代表取締役 鈴木智彦さん
ロボットSler
旭サナック株式会社

旭サナック株式会社
愛知県尾張旭市旭前町5050
https://www.sunac.co.jp/

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