導入モデル紹介

事例(プレス加工) 200トンのプレスラインをロボットで自動化

ロボット導入企業
株式会社汐見製作所
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ロボットSler
株式会社アマダ
80トン、200トン、300トン……と、大型のプレス機が立ち並ぶ、汐見製作所の本社工場。複数の工程に分けて鋼材を打ち抜き、1つの部品を形作っていく。200トンプレス機でその作業を行っているのは、真っ赤なロボットだ。ロボットアームは人の腕のように複雑な動きをしながら、ワークとなる鋼材のセットから送り出しまで、安定的な連続生産を実現している。同社ではどのようにして、板金プレスの自動化を果たしたのだろうか。

事例概要

プレス加工を請け負う汐見製作所では、自動車向けのボディ部品を中心に、月に万単位となるような大量生産品を多く手掛けている。そんな汐見製作所でも、2000年代初頭には平成不況のあおりを受け、売上高がピーク時の半分に落ち込んでしまったことがあった。必死で営業して得られた引き合いは、月に10万個ベースという車体部品の案件だった。

しかしながら問題となったのは、ワークの送り出しを人手で行わなければならないタンデムプレスラインでは、月に10万個もの生産量が確保できない。

それならば、タクトタイムの短いトランスファープレス機を考えたが、トランスファープレス機は汎用性に乏しく、当該案件が終了した後は遊休機にしてしまうリスクも高かった。


そこで同社は、ワークのセットから送り出しまでをロボットで自動化してしまおうと発想した。ちょうど2007年当時、アマダ社から自動化に対応したロボットプレスラインのシステムが販売されていた。導入コストもトランスファープレス機を購入するより安く済むことが分かり、導入に踏み切ることができた。

汐見製作所の200トンプレスラインは、お客様の需要に応える設備となった。2008年に稼働をスタートして以来、その後もさまざまな大量生産品を受け入れる土台となっている。
導入背景・課題

幅広い大量生産品に応えられる設備を

月に10万個ベースという大型案件を受注するために、新たなトランスファープレス機の導入を検討した。しかしながら、トランスファープレス機を一度導入してしまうと、同じような種類の部品製造にしか対応できなくなってしまうのが欠点だった。「もし、人が作業する汎用性の高いプレスラインを自動化することができれば、幅広い大量生産品の需要に応えられる」と考えたことから、同社のロボット活用が始まった。

導入の取り組み

順送プレス機で対応できる設備の検討

プレス機メーカーのアマダ社が、ロボットプレスラインのシステムを販売していたことで、構想が一気に具体化する。トランスファープレスを新規購入するより導入費用も抑えられることから、導入を決定。構想から稼働開始までは計8カ月ほど。うち6カ月が設備の立ち上げにかかり、その後の2カ月間で自社の社員がティーチングや現場調整を行った。

導入効果

人手不足への対応

重たい材料や大きいワークを扱うような、大変な仕事をロボットで代替することができた。ロボットラインでは、完成品を受け取って箱に詰める工程にのみ1人の作業者が必要で、その作業も高齢の方や女性社員、アルバイトスタッフが対応できるほどコンパクトになった。人手不足の進む製造業にあって、多様な人材の活躍を後押しする環境ができつつある。

品質の安定化

ロボット化により作業性が高まった。ワークの位置ズレやカットミス、寸法不良などが出なくなったためだ。検品作業は、ほぼ外観チェックだけで済み、ラインの生産管理もしやすくなった。重たく大きな鋼材を扱う作業ほど、時間がかかり作業性が落ちてしまう。そのため、200トンプレス機で製造する部品は、ロボットにより自動化した価値が大きく表れている。

価格競争力の向上

200トンのプレスラインを自動化したことで、汐見製作所の競争力が強化された。従来の方法と比べて約25%、納品価格を下げることに成功したためだ。80トン機や110トン機では実現できない、より大判な鋼材のプレス量産品にも対応できる余地が増えた。社員の時間は、より人手の必要な少量生産品へと振り分けながら、全社の受注量を着実に伸ばしている。

ロボット導入の流れ

STEP1 構想・設備の選定

2007年、汐見製作所からプレス機メーカーのアマダ社へ、200トンプレスラインの自動化構想を伝える。ロボットプレスラインのシステムにより、思い描いていたラインが実現できることが分かった。要件定義・見積もりが順調に進み、導入へ。

STEP2 導入・ティーチング

ロボットの選定から設備の立ち上げ、システム構築もアマダ社が一貫して対応した。ティーチングは汐見製作所の社員が対応し、現場との調整を重ねた。必要なスキルは、外部セミナーで習得。

STEP3 ロボットの本格稼働が開始

2008年、200トンプレスラインの本格稼働が開始。稼働後は、ロボットの大きな不具合もなく、順調に稼働している。

企業紹介

ロボット導入企業
株式会社汐見製作所

株式会社汐見製作所

1965年創業。プレス部品メーカー。自動二輪・四輪車用の板金部品をはじめ、精密板金部品や住宅用壁パネルの製造も手掛ける。試作や製品開発、金型設計・製作、自動化設備設計・製作など、量産の前後工程までカバーできることに定評。労力のかかる仕事は効率化を進め、特色あふれる仕事に職人の技術を振り分けることで、女性社員比率も40%以上に向上。現在、銅やアルミなど専門の素材のみを取り扱う他企業4社をグループに迎え、業界の発展に貢献している。従業員数354人(2023年4月現在)。

所在地/湖西市新居町新居2800

https://siomi.jp/

導入企業 担当者インタビュー

より特色あふれるプレスメーカーへ
とくに大型大量生産品のラインをロボット化したことで、工場全体の生産性と人員配置が最適化されたのは大きな成果だったと感じます。後継者不足などから廃業の道をたどる同業他社が増えていますが、無くしてはいけない技術も多いと感じます。そうした技術を次世代へ受け継ぎ、プレス業界をより魅力ある業界にしていくためにも、さらなる挑戦を続けていきたいと思います。

株式会社汐見製作所 代表取締役社長 見山圭二さん
ロボットSler
株式会社アマダ

株式会社アマダ 

1946年創業、板金加工機械の総合メーカー。板金機械事業、切削事業、研削盤事業、プレス事業、精密溶接事業の5事業を中心とする加工機械を取り扱うほか、それらを制御するコンピュータ・ソフトウエアや周辺装置、金型、メンテナンスにいたるすべてのソリューションサービスを提供している。

 

所在地/神奈川県伊勢原市石田200

https://www.amada.co.jp/ja/

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